SELLING JOURNAL / 物件種別
岡山市の市街化調整区域の土地を売るときに確認すること|建築の可否と開発許可
代表取締役 土井 未来宅地建物取引士・2級FP・投資不動産取引士

市街化調整区域は市街化を抑える区域で、岡山市では原則として開発許可や建築許可を受けなければ建物を建てられません。売る前に、①今の建物がどの許可で建てられたか、②買主が建て替えや新築をできる見込みがあるか、を資料をそろえて開発指導課の窓口で確認しておくと、買主が検討しやすくなります。
市街化調整区域とは何か、自分の土地はどちらか
都市計画では、市街地として整備を進める「市街化区域」と、市街化を抑える「市街化調整区域」に区域を分けています。岡山市の区域区分の案内では、市街化区域は既に市街地になっている区域とおおむね10年以内に優先的・計画的に市街化を図る区域、市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域で、開発許可制度により開発が規制されていると説明されています。
同じ案内によれば、令和4年11月30日現在、都市計画区域58,600ヘクタールのうち市街化区域が10,416ヘクタール、市街化調整区域が48,184ヘクタールです。面積でみると市内の都市計画区域の8割を超える範囲が調整区域にあたり、郊外の住宅地や田畑の多い地域では、道路一本を隔てて区域が分かれていることも珍しくありません。
自分の土地がどちらにあるかは、市の「Web都市計画情報システム」や地図情報システムで、市街化区域・用途地域などの都市計画情報として確かめられます。ただし画面の表示はあくまで参考図です。境界付近の土地や、売買の判断に使う場面では、都市計画課の窓口で確認しておくと安心です。なお、御津・建部地区の一部は都市計画区域外で、開発の扱いが別の案内になっています。
建物を建てるには許可が必要という原則
都市計画法第43条では、市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域では、都道府県知事(政令指定都市では市長)の許可を受けなければ建物を新築したり、改築や用途の変更をしたりしてはならないとされています。例外は、農業・林業・漁業の用に供する建物やそれらを営む人の住宅、公益上必要な建物、仮設建築物、通常の管理行為や軽易な行為などに限られます。
岡山市開発指導課の業務案内でも、市街化調整区域では農家住宅など特定のものを除き、すべての開発行為に市長の開発許可が必要で、開発許可を受けた開発区域以外の土地では建築許可を受けなければ建築できないとされています(2026年10月4日確認)。
売主にとって大事なのは、この許可が土地そのものよりも「誰が、どんな建物を、どんな理由で建てるか」に対して判断される場面が多いことです。今は家が建っている土地でも、別の人がそのまま住めるのか、建て替えができるのか、店舗など別の用途に使えるのかは、元の建物がどんな経緯で建てられたかによって答えが変わることがあります。買主の多くは住宅ローンを使うため、金融機関が建築の可否や建て替えの見込みを確認することもあります。
今ある家の「建てられた経緯」で答えが変わる
市街化調整区域の家は、建てられた時期と理由がさまざまです。区域が線引きされる前から建っていた家、農家住宅として許可不要の扱いで建てた家、開発許可や建築許可を受けて建てた家などがあり、どれにあたるかで、売却後に買主が住めるか、建て替えられるかの判断が分かれることがあります。
仮に、親が農業を営んでいたときに農家住宅として建てた家を、農業をしていない人に売る場面を考えます。この場合、買主が住み続けることや建て替えることが、用途の変更などにあたって新たな許可が必要になるかどうかを、事前に開発指導課で確かめる必要があります。許可の見込みが立たないまま契約すると、買主が予定どおり使えず、話が振り出しに戻るおそれがあります。
一方、都市計画法第44条では、開発許可や建築許可を受けた人の相続人などの一般承継人は、許可に基づく地位を承継すると定められています。相続で取得した家を売る場合は、許可を受けた人と相続の関係を示せるよう、戸籍や登記の資料も手元にそろえておくと話が進めやすくなります。相続や登記の扱いは一般情報としての説明にとどまるため、個別の手続きは司法書士などの専門家に相談してください。
令和6年・令和8年の運用変更を押さえる
市街化調整区域の取り扱いは、市の運用の見直しで変わります。岡山市開発指導課のお知らせ(2026年10月4日確認)では、次のような変更が案内されています。
①いわゆる50戸連たん制度は令和8年4月1日に廃止されました。この制度を使う場合は令和8年3月31日までの申請が必要とされていたため、以前に「連たんだから建てられる」と聞いた土地でも、今は同じ扱いにならない可能性があります。
②都市計画法第34条第11号(旧第8号の3を含む)を要件に許可を受けた建物は、令和8年4月1日から、許可を受けた人以外の人が新築・改築・所有する場合でも、法第42条第1項ただし書きまたは第43条第1項の許可を要しない取り扱いになりました。ただし、農地法の手続きを経た敷地で許可を受けた人以外が新築する場合は、別途農業委員会との協議が必要とされています。
③人口減少が著しい小串・蛍明・桃丘・角山・馬屋上の各小学校区と山南学園区では、令和6年6月1日から、20戸以上の建物が連たんする区域での自己用住宅などの開発や、適法に建てられて10年以上たち現在空き家となっている建物を、賃貸住宅や小規模店舗、農家レストランなどへ用途変更することを可能にする制度が運用されています。
近所の例や数年前に聞いた話をそのまま当てはめず、売り出す時点の基準で確認し直すことが大切です。
開発指導課に相談する前の準備と手順
市の案内では、開発行為や市街化調整区域での建築に関する手続き・相談は、本庁舎6階の開発指導課の窓口でのみ受け付けるとされています。電話やメールでは判断してもらえないため、資料をそろえて来庁する前提で準備します。
手順の目安は次のとおりです。①登記事項証明書(土地・建物)と公図を法務局で取得し、地番と面積、建物の新築年月日を確認する。②Web都市計画情報システムで区域区分を確認し、画面を保存しておく。③手元にある建築確認の書類、過去の許可書、固定資産税の納税通知書を探す。④敷地の所在が分かる地図を用意する。⑤前面の道路が市道かどうかを、地図情報システムの認定路線網図マップで確認しておく。⑥開発指導課で、今の建物の許可の経緯と、買主が住む・建て替える・別の用途で使う場合の扱いを相談する。
過去に開発許可を受けた土地であれば、開発登録簿に許可の年月日や予定建築物の用途などが登録されています。都市計画法第47条により登録簿は閲覧でき、写しの交付も請求できるとされており、市の様式集には開発登録簿謄本の交付申請書が掲載されています。窓口で聞いた内容は、日付と担当部署、説明の要点をメモに残しておくと、買主や依頼先に伝えるときに役立ちます。
- 01区域の確認
Web都市計画情報システムで市街化調整区域かを確かめる
- 02資料集め
登記事項証明書・公図・過去の許可書や建築確認書類をそろえる
- 03道路の確認
認定路線網図マップで前面道路が市道かを確かめる
- 04窓口相談
開発指導課で建物の経緯と買主の建築の可否を聞く
- 05記録
説明の日付・部署・内容をメモに残す
- 06売り出し
確認済みの事実と未確認の点を分けて買主に示す
具体例で考える:3つの場面
ここでは、仮の場面を3つ挙げて、売主が何を確かめるべきかを整理します。実際の扱いは敷地ごとに異なるため、考え方の例として読んでください。
場面A:仮に、田畑の間にある更地を売りたい場合。買主が家を建てられるかは、その人や建物が都市計画法第34条の基準のどれかにあてはまるかで判断されることが多く、売主の側だけでは結論が出ません。どんな建物なら許可の見込みがあるかを開発指導課で聞き、「建築の可否は買主の条件による」ことを売り出しの段階で正直に伝える必要があります。
場面B:仮に、第34条第11号を要件に許可を受けて建てた家を売る場合。令和8年4月1日からの運用により、許可を受けた人以外が所有したり建て替えたりする場合でも、法第42条第1項ただし書きなどの許可を要しない取り扱いになりました。以前より買主の範囲が広がる可能性がある一方、敷地が農地法の手続きを経ている場合は農業委員会との協議が別に必要とされています。
場面C:仮に、山南学園区で10年以上前に適法に建てられ、いまは空き家になっている家を賃貸住宅として使いたい買主がいる場合。対象の6小学校区(学園区を含む)では、空き家の用途変更を可能にする制度が運用されているため、その制度の対象になるかを確認する価値があります。対象の区域かどうか、建物が適法に建てられたことを示せるかが確認のポイントです。
3つの場面に共通するのは、売主が「誰に、どう使ってもらえる土地か」を先に把握しておくことです。その答えによって、住宅を探す個人に向けるのか、事業者に向けるのか、買取を検討するのかといった売り方が変わります。
買主・金融機関に伝える情報と契約での決め方
市街化調整区域の土地は、建てられる人や建物が限られる分、買主の範囲が狭くなりがちです。確認した内容を売り出しの段階で示せるかどうかが、検討してもらえるかの分かれ目になります。建築の可否がはっきりしない物件は、買主が自分で調べる手間や不安を価格に反映させようとすることもあります。
伝えたい情報は、①区域区分の確認結果、②今の建物の許可の経緯と、それを示す資料の有無、③開発指導課で説明を受けた日付と内容、④前面道路の種類と排水先、⑤農地が含まれるかどうか、の5つです。確認できた事実と、まだ確認できていない点を分けて書くことが大切です。
契約では、買主が建築許可や開発許可を得られなかった場合にどうするかを決めておきます。たとえば許可の取得を条件にする、条件の期限を決める、といった取り決めです。買主が住宅ローンを使う場合は、金融機関の審査でも建築の可否が問われることがあります。ローンや契約条件の判断は一般情報の範囲を超えるため、具体的には金融機関や依頼先と相談しながら決めてください。
- 市街化調整区域であることの確認結果(画面の保存など)
- 今の建物の新築時期と、許可の種類または許可不要だった理由
- 許可書・建築確認書類・開発登録簿の写しの有無
- 開発指導課で説明を受けた日付と内容
- 前面道路の種類と、上下水道・排水先の状況
- 農地が含まれるかどうか
- 50戸連たん廃止など、最近の運用変更の影響の有無
- 契約で許可の取得を条件にするかの方針
農地や事業用地が含まれる場合の注意
市街化調整区域の売却では、宅地と一緒に田や畑が含まれていることがよくあります。登記上の地目や現況が農地の部分は、農地法の手続きが別に関わるため、開発指導課だけでなく農業委員会にも確認が必要になることがあります。前述のとおり、第34条第11号の許可を受けた敷地でも、農地法の手続きを経た土地で許可を受けた人以外が新築する場合は、農業委員会との協議が必要とされています。
一方、インターチェンジ周辺や幹線道路沿いの土地については、市が令和6年10月に「企業用地の確保に関する運用方針」を公表しています。市街化調整区域内の高速道路インターチェンジ周辺や幹線道路沿い、産業拠点の周辺で、製造工場や物流施設の立地を促すための地区計画や、既存工場の隣接地への拡張に関する許可の考え方などが示されています。事業用の買主を想定できる土地かどうかは、住宅用地とは別の視点で確認する価値があります。
いずれの場合も、対象の制度にあてはまるかは個別の判断です。担当課に確認した結果をもとに、どの買主層に向けて売り出すかを決めていきます。
売主がつまずきやすい点と避け方
市街化調整区域の売却で話が止まりやすいのは、制度そのものよりも、確認の順番や伝え方の行き違いです。よく見られるつまずきを挙げておきます。
①「家が建っているのだから建て替えもできるはず」と思い込む。建物があることと、別の人が建て替えられることは別の問題です。許可の経緯を確かめるまでは、建て替えの可否を断定して伝えないようにします。
②近所の売買例を根拠にする。隣の土地で家が建ったとしても、その土地の所有者の条件や、当時の基準で許可されただけかもしれません。50戸連たん制度の廃止のように、基準そのものが変わることもあります。
③資料が見つからないまま売り出す。古い家ほど許可書や建築確認の書類が残っていないことがあります。見つからない場合も、登記事項証明書の新築年月日や、開発登録簿の写しで経緯を推定できることがあるため、窓口で何を示せばよいかを相談します。
④買主任せにする。買主が自分で窓口に行って初めて建てられないと分かると、交渉がやり直しになります。売主の側で先に確認しておくほうが、結果として売却までの道のりが短くなりやすいといえます。
境界が確定していない、越境物があるといった土地の問題が重なる場合は、測量や登記の専門家への相談も早めに検討してください。
トリプルギブへのご相談
株式会社トリプルギブは岡山市南区を拠点に、土地の売買・仲介と分譲開発を行っています。市街化調整区域の物件は、区域の線引き、元の建物の許可の経緯、道路や排水の状況、農地の有無によって、売り方の選択肢が変わります。
ご相談をいただいたら、物件の調査をもとに根拠のある査定を出し、仲介で買主を探すか、買取を検討するかを含めて売却方針を明確にしていきます。開発指導課での確認に必要な資料の整理も、一緒に進められます。
対応できるかどうかは物件ごとに判断しますので、まずは所在地と、登記事項証明書や納税通知書など手元の資料をお知らせください。
よくある質問
Q. 市街化調整区域の家は、そもそも売ってもよいのですか?
売買そのものは禁止されていません。問題になるのは、買主がその家に住み続けたり、建て替えたり、別の用途で使ったりできるかどうかです。許可が必要な場面で許可の見込みがないと、買主は使い方が限られる物件として判断します。売主が売り出し前に開発指導課で建物の許可の経緯を確認しておけば、買主の不安を減らし、契約後のトラブルも防ぎやすくなります。
Q. 50戸連たん制度で建てられると言われた土地は、もう建てられないのですか?
岡山市では50戸連たん制度が令和8年4月1日に廃止され、利用するには令和8年3月31日までの申請が必要とされていました。そのため、制度を前提にした以前の説明は、そのまま当てはまらない可能性があります。ただし、ほかの基準で許可の見込みがある場合もあるため、あきらめる前に、現在の基準で建てられるかを開発指導課の窓口で確認してください。
Q. 開発指導課へは売主本人が行かないといけませんか?
市の案内では、相談は窓口でのみ受け付け、敷地の地図、公図、登記事項証明書などが必要とされています。本人でなければならないとの記載は確認できませんでしたが、建物の経緯を一番知っているのは所有者や家族であることが多いため、依頼先と一緒に行くと説明がスムーズです。行く前に、確認したい点を紙にまとめておくと聞き漏れを防げます。
Q. 倉敷市や瀬戸内市の調整区域の土地はどこに確認すればよいですか?
この記事は岡山市の案内をもとにしています。市街化調整区域の運用は自治体ごとに異なり、岡山市の50戸連たん廃止や6小学校区の制度は他市には当てはまりません。倉敷市の土地は倉敷市の公式サイトで開発許可の担当課を確認し、瀬戸内市なども同様に各市の公式サイトで相談先を確かめてから、資料をそろえて問い合わせてください。
この記事は一般情報です。法律・税金・相続・登記・住宅ローン等の個別案件は、税理士、司法書士、弁護士、金融機関などへ確認してください。
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