SELLING JOURNAL / 費用・税金
岡山で不動産を売る売主の印紙税|売買契約書の税額と軽減措置の期限の確かめ方
代表取締役 土井 未来宅地建物取引士・2級FP・投資不動産取引士

売買契約書は印紙税の課税文書で、売主が持つ原本にも印紙が必要です。税額は契約書に記載された契約金額で決まり、平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作成される契約書には軽減税率があります(令和8年4月1日現在法令等)。契約日が決まったら、国税庁のタックスアンサーで期限と税額を確かめましょう。
売主の手元に残る契約書にも印紙税がかかる
土地や建物の売買契約書は、印紙税法上の「不動産の譲渡に関する契約書」(第1号文書)にあたります。売買契約書は売主と買主が1通ずつ持つことが多く、国税庁の案内では、一つの契約について2通以上の文書を作っても、それぞれが契約の成立を証明する目的で作られたものであれば、すべてが課税対象になるとされています。つまり、売主が保管する原本にも印紙が必要です。
購入時の印紙税は買主側の話として紹介されることが多いのですが、売る側にとっても売却費用の一つです。国税庁は、売主が負担した印紙税は、譲渡所得を計算するときの譲渡費用に含まれると案内しています。金額としては仲介手数料などより小さいことが多いものの、契約日当日に慌てないよう、誰がどの原本の印紙を用意するかまで含めて、事前に把握しておきたい項目です。仲介で売る場合も買取で売る場合も、売買契約書を作るのであれば同じように考えます。
この記事では、売主の立場で「いくらかかるか」「いつまで軽減されるか」「どう貼るか」「契約後に金額が変わったらどうなるか」を、国税庁のタックスアンサーで確かめられる範囲に絞って整理します。
契約金額ごとの税額(本則と軽減後)
国税庁のタックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)によると、不動産の譲渡に関する契約書の税額は、契約書に記載された契約金額で決まります。本則の税額は、1万円未満は非課税、1万円以上10万円以下は200円、契約金額の記載のないものも200円です。
住宅や土地の売却で出てきやすい金額帯を本則と軽減後で並べると、①100万円を超え500万円以下は本則2千円・軽減後1千円、②500万円を超え1千万円以下は本則1万円・軽減後5千円、③1千万円を超え5千万円以下は本則2万円・軽減後1万円、④5千万円を超え1億円以下は本則6万円・軽減後3万円です。郊外の小さな土地などで金額が低い場合は、50万円を超え100万円以下が本則1千円・軽減後500円、10万円を超え50万円以下が本則400円・軽減後200円です。
なお、消費税額が区分して記載されている場合、その消費税額は記載金額に含めない扱いがあると国税庁は案内しています(No.7124)。アパートなどの収益物件で金額が大きい場合は、1億円を超え5億円以下が本則10万円・軽減後6万円です。自分の契約金額がどの区分に入るかは、必ず最新のページで確かめてください。
| 契約書に記載された契約金額 | 本則の税額 | 軽減後の税額 |
|---|---|---|
| 50万円を超え100万円以下 | 1千円 | 500円 |
| 100万円を超え500万円以下 | 2千円 | 1千円 |
| 500万円を超え1千万円以下 | 1万円 | 5千円 |
| 1千万円を超え5千万円以下 | 2万円 | 1万円 |
| 5千万円を超え1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
仮の売却価格で印紙代を見積もる
上の税額表を使うと、売主が自分の持つ契約書1通に必要な印紙代を、売却価格からおおよそ見積もれます。ここでは前提を置いた仮の例で考えます(実際の取引ではありません)。
仮に、市内の中古戸建てを1,980万円で売る契約を令和8年中に結ぶ場合、1千万円を超え5千万円以下の区分なので、軽減後の税額は1万円(本則は2万円)です。売主と買主が原本を1通ずつ持つなら、売主の分は1万円、買主の分も同じ区分で1万円になります。仮に、郊外の土地を800万円で売る場合は、500万円を超え1千万円以下の区分で、軽減後は5千円(本則は1万円)です。
注意したいのは区分の境目です。仮に価格交渉で1,000万円ちょうどに決まれば「1千万円以下」の区分で軽減後5千円、1,010万円なら「1千万円を超え」の区分で軽減後1万円になります。5千万円の前後も同じで、境目をまたぐと税額が変わります。印紙の金額だけを理由に価格を決めることはおすすめしませんが、見積もりは契約書に実際に記載する金額で行ってください。こうした見積もりは、仲介手数料や登記費用とあわせて、売却全体の費用と手取りを見通す材料の一つとして使いましょう。
軽減措置の適用期間を確かめる方法
軽減措置は、平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される不動産の譲渡に関する契約書のうち、契約金額が10万円を超えるものが対象です(令和8年4月1日現在法令等)。期限は契約書を作成した日で判断するため、売買契約の締結日が期間内かどうかを確認します。
確かめ方は次の三つです。①国税庁のタックスアンサー「No.7108」を開き、適用期間の記載を読む。②ページ冒頭にある「令和〇年〇月〇日現在法令等」の日付を見て、いつ時点の情報かを確認する。③契約日が令和9年3月31日に近い場合や、それ以降になる場合は、延長などの税制改正があったかを国税庁のページで改めて確認する。
たとえば、売却活動を始めた時点では期間内でも、買主が見つかって契約を結ぶのが令和9年4月以降になれば、その時点の法令で判断することになります。期限の延長は税制改正で決まるため、ネット上の古い記事に載っている税額をそのまま使わず、契約日が見えてきた段階でもう一度確認するのが確実です。
なお、軽減措置の対象は契約金額が10万円を超える契約書なので、10万円以下の契約書は本則の税額のままです。一般的な住宅や土地の売買ではまず該当しませんが、ごく小さな土地の一部を売るような場合は区分を確かめておきましょう。
写しやコピーの扱い
売主の手元に置く契約書を「写し」として、印紙を貼らずに済ませられないかと考える方もいます。国税庁の案内(No.7120)では、写しや副本と表示された文書でも、契約当事者の双方または相手方の署名・押印があるもの、正本と相違ない旨などの当事者の証明があるものは課税対象になるとされています。
一方、正本を複写機でコピーしただけで、署名・押印や証明のないものは単なる写しであり、課税対象にならないとされています。ファクスや電子メールで送ったものも課税対象外と案内されています。つまり「写し」という名前を付けたかどうかではなく、その文書が契約の成立を証明するものとして作られたかどうかで判断される、という考え方です。
売主にとっては、原本を持つか、コピーを持つかで手元の書類の性格が変わります。将来、譲渡所得の申告や買主とのやり取りで契約内容を示す場面もあるため、どの形で契約書を作り、誰が何通持つかは、売買契約の準備段階で仲介する不動産会社と買主側とで確認しておきましょう。
仮に、原本は買主だけが持ち、売主は買主の署名・押印が入った「写し」を受け取る形にすると、その写しは課税対象になり得ます。印紙を減らすつもりで作り方を変えても、結果として印紙が必要になる場合があるということです。作り方を変える場合は、国税庁のNo.7120や税務署で扱いを確かめてから進めると安心です。
印紙の貼り方と消印、貼り忘れたとき
印紙税は、課税文書に収入印紙を貼り、印章または署名で消すことで納めます。国税庁の案内(No.7129)では、自己またはその代理人、使用人その他の従事者の印章または署名で、文書と印紙の彩紋とにかけて、はっきりと印紙を消す必要があるとされています。契約の場では、署名や押印のついでに、印紙と契約書にまたがるように押印または署名する流れになるのが一般的です。
貼り忘れや消し忘れには過怠税があります(No.7131)。印紙を貼らなかった場合は、納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額の合計、つまり3倍に相当する過怠税がかかるとされています。ただし、調査を受ける前に自ら「印紙税不納付事実申出書」を税務署長に提出し、調査があることを予知したものでないときは、1.1倍に軽減されます。印紙を貼っていても消印をしていない場合は、消されていない印紙の額面に相当する金額の過怠税がかかります。
仮に、軽減後1万円の印紙が必要な契約書に貼り忘れた場合、3倍なら3万円、自ら申し出て軽減されれば1万1千円という計算になります。過怠税は所得税の必要経費にならないとされているため、契約当日に印紙と消印を確認しておくのが一番の対策です。
契約金額を変更したとき・印紙を貼りすぎたとき
契約後に、測量の結果や引渡し条件の見直しで売買代金を変更する覚書を交わすことがあります。国税庁の案内(No.7127)では、変更契約書は、印紙税法で定める重要な事項を変更するものであれば課税対象になるとされ、契約金額は重要な事項にあたります。
変更後の記載金額の考え方はNo.7123にまとめられています。変更前の契約書の名称や文書番号などで元の契約書が特定できる場合、増額の変更なら増加した金額が記載金額になり、減額の変更なら記載金額のない文書として扱われます。元の契約書が特定できない書き方だと、変更金額のみの記載なら増額・減額のどちらでもその変更金額が記載金額となります。仮に、1,980万円の契約を元の契約書を特定したうえで2,030万円に増額する覚書なら、増加分の50万円が記載金額になる、という考え方です。覚書の書き方で税額が変わるため、文案は不動産会社と確認しましょう。
反対に、必要な額より多い印紙を貼った場合や、非課税の文書に誤って貼った場合は、過誤納として還付を受けられることがあります(No.7130)。納税地の所轄税務署に「印紙税過誤納確認申請(兼充当請求)書」を提出し、印紙を貼った文書の現物を示す必要があります。請求できる日から5年を経過すると権利は消滅するとされています。
印紙代を売却費用として記録しておく
売却の翌年には、利益が出た場合などに譲渡所得の申告が必要になることがあります。国税庁の案内(No.3255)では、譲渡費用となるものとして、土地や建物を売るために支払った仲介手数料、印紙税で売主が負担したもの、土地を売るために建物を取り壊したときの取壊し費用などが挙げられています。一方、修繕費や固定資産税など資産の維持や管理のためにかかった費用、売った代金の取立てのための費用は譲渡費用にならないとされています。
つまり、売主が自分の原本に貼った印紙代は、申告の際に譲渡費用として扱える項目です。金額は数千円から数万円でも、記録が残っていないと後から根拠を示しにくくなります。仮に、1万円の印紙を郵便局などで購入した場合は、その領収書と、印紙を貼った契約書の原本をセットで保管しておくと、申告の準備で迷いません。買主が負担した分は売主の譲渡費用には入らない点も、分担を決めるときに意識しておきましょう。
費用の一覧は、売出しの段階から作っておくと便利です。仲介手数料、印紙代、登記に関する費用、測量や解体の費用などを、支払日・支払先・金額とあわせて記録し、契約書や領収書と同じ場所に保管します。どの費用が譲渡費用にあたるかの最終的な判断は、申告の内容によって変わることがあるため、税務署や税理士に確認してください。
売主が契約前に確認しておくこと
売買契約の前に、売主として確認しておきたい点を時期ごとに並べます。①売出しを決めた段階:見積もった売却価格の区分で、印紙代を売却費用の一覧に入れておく。②買主が決まり契約日が見えた段階:契約日が軽減措置の期間内か、国税庁のNo.7108で確認する。③契約書の文案を受け取った段階:契約金額の記載、消費税額の区分記載の有無、契約書を何通作り売主がどれを保管するか、印紙代をどちらがどの分負担するかを確認する。④契約当日:印紙の金額が区分と合っているか、消印がされているかを見る。⑤契約後に金額を変える場合:覚書の書き方と印紙の要否を確認する。
市内で売却する場合も、倉敷市など近隣で売却する場合も、印紙税は国の税金なので全国共通の扱いです。迷ったときの確認先は税務署で、国税庁の「税務署の所在地・管轄区域(岡山県)」のページで、物件や住所地を管轄する税務署を調べられます。岡山市内は区や地域によって管轄の税務署が分かれているため、ページで管轄区域を確かめてから問い合わせると確実です。
ここで紹介した内容は一般情報です。具体的な文書が課税対象か、税額はいくらか、譲渡費用としてどう扱うかに迷う場合は、税務署や税理士に確認してください。
- 見積もった売却価格がどの金額区分に入るか
- 契約日が軽減措置の適用期間内か(国税庁No.7108)
- 契約書を何通作り、売主がどれを保管するか
- 印紙代を売主・買主のどちらがどの分負担するか
- 消費税額が区分して記載されているか
- 契約当日に印紙の金額と消印を確認したか
- 代金を変更する覚書の書き方と印紙の要否
- 迷う点を確認する管轄の税務署はどこか
トリプルギブへのご相談
株式会社トリプルギブは、岡山市南区を拠点に岡山市全域・倉敷市・瀬戸内市を中心とした不動産の売買・仲介を行っています。ご相談後は物件の調査をもとに根拠のある査定を提出し、売却方針を明確にしたうえで仲介か買取かを確定します。
売買契約の準備では、契約書を何通作るか、印紙をどちらがどの分用意するか、金額の変更がありそうな場合の覚書の扱いなど、売主として確認すべき点を一つずつ整理していきます。印紙代を含めた売却費用の見通しも、査定の段階からご説明します。税額や課税の判断で迷う点は、税務署や税理士への確認をおすすめしています。
対応できるかどうかは物件ごとに判断しますので、まずは物件の所在地や種類、売却を考えている時期をお知らせください。
よくある質問
Q. 売主と買主の印紙代は、どちらが払うと決まっているのですか。
実際の取引では、売主と買主がそれぞれ保管する原本の印紙を各自で負担する形がよく見られますが、どちらが払うかは契約ごとに取り決めるものです。売主が負担した印紙税は、譲渡所得を計算するときの譲渡費用に含まれると国税庁は案内しています。負担の分け方は契約前に不動産会社を通じて確認し、合意しておきましょう。
Q. 売主は原本を持たず、コピーだけを保管してもよいのですか。
正本を複写機でコピーしただけで署名・押印や証明のないものは、課税対象にならない単なる写しとされています。ただし、原本は契約内容を証明する大切な書類で、譲渡所得の申告などで売買代金を示す場面もあります。原本を何通作り誰が持つかは取引ごとに決めることなので、メリットと注意点を不動産会社と相談したうえで決めてください。
Q. 契約が解除になった場合、貼った印紙代は戻りますか。
国税庁が還付の対象として挙げているのは、所定の額を超えて印紙を貼った場合、非課税の文書に誤って貼った場合、課税文書の用紙に貼った印紙を使う見込みがなくなった場合などです。作成済みの契約書がその後解除になったケースが当てはまるかは個別に判断されるため、自己判断で処理せず、原本を手元に残したうえで所轄の税務署に確認してください。
Q. 土地と建物を一緒に売る場合、印紙は別々に必要ですか。
土地と建物を一つの売買契約書にまとめる場合は、その契約書に記載された契約金額(土地と建物の合計)で区分を判断し、1通ごとに印紙を貼るのが基本です。建物部分の消費税額が区分して記載されていれば、その消費税額は記載金額に含めない扱いがあります。契約書を分ける場合の扱いも含め、文案の段階で確認しましょう。
この記事は一般情報です。法律・税金・相続・登記・住宅ローン等の個別案件は、税理士、司法書士、弁護士、金融機関などへ確認してください。
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