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岡山で共有名義の不動産を売るには|共有者全員の同意と改正民法の手続き
代表取締役 土井 未来宅地建物取引士・2級FP・投資不動産取引士

共有名義の不動産全体を売るには、原則として共有者全員の同意が必要です。令和5年4月1日施行の改正民法で、所在がわからない共有者がいる場合に裁判所の決定を得て持分を譲渡・取得できる仕組みが設けられました。ここでは一般情報として流れを整理します。共有者間の調整や裁判手続きは弁護士・司法書士へご相談ください。
共有不動産全体を売るには全員の同意が基本
民法第251条第1項は、各共有者は他の共有者の同意を得なければ共有物に変更を加えることができないと定めています。法務省の改正資料でも、必要な調査を尽くしても所在がわからない共有者がいると、不動産全体を売却することはできないという問題が示されています。持分の割合が大きい人だけで売却を決められるわけではなく、共有者全員が売ることに合意し、売主として契約と決済に関わるのが基本です。
仮に、親から相続した岡山市内の実家を、長男・長女・次男の3人が各3分の1で共有しているとします。長男と長女が売りたいと考えていても、次男が同意しなければ家全体を買主に引き渡す契約はできません。逆に、3人の意思がそろっていれば、窓口役を決めたうえで仲介や買取の相談を進められます。
まずは法務局で登記事項証明書を取り、共有者全員の氏名・住所・持分を確かめましょう。登記上の住所が古いままのこともあるため、連絡先がわかるかどうかもあわせて整理しておくと、その後の手続きの選び方がはっきりします。
共有になった経緯によって、使える手続きや注意点は変わります。夫婦で購入した家、親から相続した実家、兄弟で買った土地など、まずは「いつ、どういう理由で共有になったか」を書き出しておくと、専門家や不動産会社への相談がスムーズです。この記事は法務省資料と法令を確認した一般情報です。
自分の持分だけを手放す方法と、全体で売る場合の違い
共有者全員の合意がそろわないとき、「自分の持分だけを手放したい」と考える方もいます。法務省の資料では、共有者が他の共有者の持分を取得する方法として、共有者から任意で持分の譲渡を受ける方法が挙げられています。たとえば、共有者の一人が他の共有者の持分を買い取って単独名義にし、その後に一人の売主として売り出すという進め方があります。
一方で、同じ資料には、不動産の共有持分を売却して得る代金よりも、不動産全体を売却して持分に応じて受け取る代金のほうが高額になりやすいという説明もあります。持分だけを取得した人は、残りの共有者と一緒に物件を使うことになるため、買い手の側から見ると使い方が限られるからです。
そのため、共有者どうしで話し合いの余地があるなら、まずは全体での売却を目標にし、査定額と手取りの見込みを全員に同じ形で示すのが現実的です。持分の売買や買い取りを選ぶ場合も、価格の決め方や登記の手続きについて、司法書士など専門家に確認しながら進めてください。
仮に、共有者の一人が他の2人の持分を買い取る場合、その人は買い取りの資金を用意する必要があります。住宅ローンなどの借り入れを考えるなら、持分の買い取りに使えるかどうかを金融機関に事前に確認しておきましょう。買い取った後に単独名義で売り出すまでの期間や費用も含めて、全体で売る場合と手取りを比べることが大切です。
改正民法で持分の過半数でできるようになった管理
売却までのあいだ、空き家の修繕や一時的な貸し出しをどう決めるかも共有者の悩みどころです。法務省の資料によると、令和5年4月1日施行の改正民法で、形状や効用の著しい変更を伴わない軽微な変更は、全員の同意ではなく持分の過半数で決められることになりました。例として、砂利道のアスファルト舗装や建物の外壁・屋上防水などの大規模修繕工事が挙げられ、共有土地の分筆などの登記も持分の過半数で申請できると説明されています。
短期の賃貸借についても、土地は5年、建物は3年を超えない範囲なら持分の過半数で決定できると整理されました。ただし借地借家法が適用される賃貸借は、存続期間3年以内の定期建物賃貸借などを除き、基本的に全員の同意が必要とされています。売却予定の家を貸す場合は、売り出しの時期と契約期間が重ならないかも考えておきましょう。
連絡しても賛否を明らかにしない共有者がいる場合は、1か月以上の期間を定めた裁判所の手続きを経て、その人以外の持分の過半数で管理の事項を決められる制度もできました。ただし、売却のような変更行為には使えません。共有物の管理者を選ぶ仕組みも設けられています。管理者は持分の過半数で選任でき、共有者以外の人を選ぶことも可能とされています。遠方に住む共有者が多い場合、売却までの空き家の見回りや修繕の窓口を一本化する方法として検討する価値があります。
共有者の一部と連絡がつかないときの裁判手続き
改正民法では、必要な調査を尽くしても氏名や所在がわからない共有者(所在等不明共有者)がいる場合の手続きが設けられました。法務省の資料によると、①裁判所の決定を得て、所在等不明共有者の不動産の持分を他の共有者が取得する制度、②申立てをした共有者に、所在等不明共有者の持分を譲渡する権限を与える制度があります。
②は、所在等不明共有者以外の共有者全員が持分の全部を譲渡することを条件に、不動産全体を特定の第三者に譲渡する場合にだけ使えます。管轄は不動産の所在地の地方裁判所で、3か月以上の異議届出期間の公告、時価相当額を持分に応じて按分した額の供託を経て裁判がされます。誰にいくらで売るかは、所在等不明共有者以外の共有者が判断します。裁判が確定した後は、原則2か月以内に、裁判とは別に売買契約などの譲渡を行う必要があります(裁判所が期間を延ばすことは可能とされています)。
注意したいのは「所在等不明」の証明です。登記簿上の住所に手紙が届かないだけでは足りず、住民票の調査など必要な調査を尽くしても不明であることを示す必要があります。買主を探す時期と裁判の進み方を合わせる必要もあるため、弁護士・司法書士と不動産会社が早めに情報を共有しておくことが大切です。
- 01所在の調査
登記簿だけでなく住民票の調査など必要な調査を尽くす
- 02申立て
不動産の所在地の地方裁判所に、持分を譲渡する権限の付与を申し立てる
- 03公告
3か月以上の異議届出期間などが公告される
- 04供託
裁判所が決めた時価相当額(持分に応じた額)を供託する
- 05裁判の確定
申立てをした共有者に譲渡権限が与えられる
- 06売買契約
確定から原則2か月以内に、ほかの共有者全員とともに第三者へ全体を売却する
相続による共有(遺産共有)と相続登記の義務化
相続が起きた後、遺産分割がまだ終わっていない状態の共有は遺産共有と呼ばれます。法務省の資料では、遺産共有の不動産に共有の規定を当てはめるときは、法定相続分(遺言で相続分の指定がある場合はその割合)を基準に持分を考えることが明記されたとされています。また、前の見出しで紹介した所在等不明共有者の持分の取得・譲渡の制度は、遺産共有の場合、相続開始から10年を経過しなければ利用できません。相続して間もない実家で相続人の一人と連絡が取れない場合は、遺産分割の手続きなど別の方法を検討することになります。
あわせて押さえたいのが相続登記の義務化です。法務省によると、令和6年4月1日から、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の相続登記の申請が義務になり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます。施行日より前に開始した相続も対象で、原則として令和9年3月31日までに申請が必要とされています。義務を簡易に果たすための相続人申告登記という制度も設けられましたが、遺産分割が成立した後の登記の義務には対応しない点に注意が必要です。
売却の場面では、亡くなった方の名義のままでは買主への名義変更ができないため、相続登記は売却準備の一部でもあります。どの手続きが使えるかは事情によって異なるため、司法書士や弁護士に相談して方針を決めてください。
話し合いがまとまらないときの共有物分割
共有者の所在はわかっていても、売るかどうか、いくらで売るかで意見がまとまらないこともあります。その場合の方法の一つが、裁判による共有物分割です。法務省の資料によると、改正民法では分割の方法として、現物分割(土地などを持分に応じて物理的に分ける)と、賠償分割(共有者の一人などが取得し、他の共有者に代償金を支払う)が可能であることが明文化されました。どちらもできない場合や、分割で価格を著しく減らすおそれがある場合に、競売で第三者に売って代金を分ける競売分割を行うという検討順序も明確になっています。
仮に、建物が1棟だけ建つ宅地を3人で共有している場合、建物ごと3つに分けるのは難しく、現物分割は現実的でないことが多いでしょう。誰か一人が住み続けたいなら賠償分割、誰も使わないなら全体を売って分ける、という形で、裁判に進む前に共有者どうしで同じ選択肢を比べておくと話が整理しやすくなります。
裁判には時間も費用もかかり、競売では市場で売るときのように売り方を工夫しにくい面もあります。まずは査定額と売却にかかる費用、手取りの見込みを書面で示し、共有者が同じ情報をもとに話し合える状態をつくることが大切です。
売却代金と税金の考え方(計算例)
共有不動産を売った場合の税金は、ここでは一般情報として国税庁の計算式で考え方を示します。譲渡所得は「収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額」で計算し、取得費がわからない場合は譲渡価額の5%を概算取得費とすることができます。譲渡費用には仲介手数料や売主負担の印紙税、売るための建物取壊し費用などが含まれ、固定資産税や修繕費などの維持管理費は含まれません。売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えれば長期譲渡所得で、相続した不動産は亡くなった方の取得日から期間を数えます。
仮に、相続した実家を3人が各3分の1で共有し、2,400万円で売れたとします。取得費が不明で概算取得費120万円、仲介手数料などの譲渡費用を90万円とすると、譲渡所得は2,190万円です。これを持分で分けると1人あたり730万円となり、長期譲渡所得の税率(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税は所得税額の2.1%)を当てはめると、所得税約109万5,000円、復興特別所得税約2万3,000円、住民税約36万5,000円という目安になります。
この例は特別控除を使わない場合の概算で、端数処理も省いています。居住用財産や空き家の特例など使える特別控除は共有者ごとの事情で変わり、確定申告も各自で行うことになります。実際の税額や特例の可否は、税理士や税務署に必ず確認してください(2026年10月時点の国税庁ページで確認)。
共有者が多い売却の進め方と岡山での確認先
共有者全員が売主になる取引では、次の順で準備すると混乱が少なくなります。①登記事項証明書と、相続の場合は戸籍で共有者と持分を確定する、②窓口となる代表者を決める、③売り出し価格と最低限の売却価格、仲介か買取かの方針を合意する、④仲介手数料や測量費、解体費などの費用負担と代金の分け方を書面に残す、⑤契約日と決済日に全員がどう関わるか(立ち会いや書類の事前準備)を決める、という流れです。県外に住む共有者がいる場合は書類の郵送に時間がかかるため、日程に余裕を持たせましょう。抵当権が残っている場合は、借入先の金融機関との調整も早めに必要です。
確認先として、登記事項証明書や登記の手続きは岡山地方法務局(岡山市北区南方)が窓口で、公式サイトに登記手続案内の情報があります。岡山市では、区役所の市民保険年金課や支所などで戸籍証明書を請求できます。また市は、予約不要の司法書士・土地家屋調査士による定例無料相談(相続・登記・境界)や、市内在住で1年以内に利用していない方を対象にした予約制の弁護士による無料法律相談を案内しています。日程は年度ごとに変わるため、市の公式ページで最新の案内を確認してください。倉敷市・瀬戸内市にお住まいの方は、各市の公式サイトで同様の相談窓口をご確認ください。
- 登記事項証明書で共有者全員の氏名・住所・持分を確認した
- 相続した不動産は相続登記が済んでいるか確認した
- 共有者全員と連絡がつくか、連絡先を一覧にした
- 窓口となる代表者を決めた
- 売り出し価格と最低限の売却価格を全員で合意した
- 仲介か買取かの方針を共有した
- 費用負担と代金の分け方を書面に残した
- 抵当権の有無と、借入先の金融機関への確認の要否を確かめた
- 税金について共有者それぞれが税理士などに相談する段取りをした
トリプルギブへのご相談
株式会社トリプルギブは、岡山市南区福吉町を拠点に、岡山市・倉敷市・瀬戸内市を中心とした不動産の売却相談に対応しています。共有名義の不動産では、共有者のみなさまが同じ情報をもとに判断できることが何より大切です。ご相談後は、物件の調査をもとに根拠のある査定を提出し、売却方針を明確にしたうえで仲介か買取かを確定します。査定の内容は、共有者の方々にそのまま共有していただける形でご説明します。
共有者間の権利の調整や裁判手続きは弁護士、登記は司法書士、税金は税理士の領域となるため、必要に応じて専門家への相談をおすすめしながら進めます。対応できるかどうかは物件ごとに判断しますので、まずは共有者の人数や連絡状況など、現在の状況をお聞かせください。
ご相談の際は、登記事項証明書や固定資産税の納税通知書、相続の場合は遺言や遺産分割の話し合いの状況がわかるものをお持ちいただくと、調査と査定の準備を早く始められます。共有者全員がそろっていない段階でのご相談でもかまいません。
よくある質問
Q. 共有者の一人が遠方に住んでいて、契約や決済の日に来られません。それでも売れますか?
共有者全員が売主になる点は変わりませんが、全員が同じ日に同じ場所へ集まらなければならないとは限りません。書類への署名や本人確認を事前に済ませる方法や、代理人を立てる方法などが検討されます。どの方法が使えるかは、買主側や決済を担当する司法書士の確認が必要です。日程が決まってから慌てないよう、遠方の共有者がいることは早い段階で不動産会社と司法書士に伝えておきましょう。
Q. 実家に共有者の一人が住み続けています。ほかの共有者だけで売却を決められますか?
家全体の売却は変更行為にあたるため、住んでいる共有者を含む全員の同意が必要です。法務省の資料では、共有物を使用している共有者は、ほかの共有者に対して自分の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う(共有者間で無償と定めた場合を除く)と整理されています。売却するか、住んでいる人が持分を買い取るかなど、選択肢を並べて話し合うのが一般的です。対立が深い場合は弁護士にご相談ください。
Q. 共有者が亡くなって、その持分がさらに相続されました。どうなりますか?
亡くなった共有者の持分は、その方の相続人に引き継がれます。相続が重なると共有者の人数が増え、面識のない親族と話し合う必要が出ることもあります。まずは戸籍で相続人を確定し、登記事項証明書と照らし合わせて現在の共有者を一覧にしましょう。相続登記の申請義務は持分を取得した相続人にもかかるため、司法書士に相談して、売却と登記の段取りをあわせて整理するのがおすすめです。
Q. 売却代金は持分どおりに分けなければいけませんか?
代金は持分に応じて分けるのが基本的な考え方ですが、立て替えた固定資産税や修繕費、解体費の負担をどう精算するかは共有者間の話し合いで決めることになります。後のトラブルを防ぐため、費用負担と精算方法は契約前に書面で残しておきましょう。持分と異なる割合で代金を受け取ると、贈与などの税金の問題が生じる可能性もあるため、分け方を決める前に税理士に確認しておくと安心です。
この記事は一般情報です。法律・税金・相続・登記・住宅ローン等の個別案件は、税理士、司法書士、弁護士、金融機関などへ確認してください。
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