SELLING JOURNAL / 状況別
親の判断能力に不安があるときの岡山の実家売却|成年後見と居住用不動産の処分許可
代表取締役 土井 未来宅地建物取引士・2級FP・投資不動産取引士

実家の名義が親の場合、売るのは名義人である親本人です。判断能力が十分でないときは、家庭裁判所が選んだ成年後見人などが本人に代わって手続きを行い、住まいだった家を売るには家庭裁判所の許可が必要です。許可なく行った処分は無効とされています。ここでは一般情報として流れを整理します。具体的な手続きは弁護士・司法書士や家庭裁判所へご相談ください。
実家を売る主体は名義人である親本人
親名義の実家を売る場合、売主は登記上の名義人である親本人です。子が同居していたり介護をしていたりしても、家族であることだけを理由に代わりに売ることはできません。親が施設に入所して実家が空き家になり、管理の手間や費用から売却を考えるご家族は少なくありませんが、本人の判断能力に不安がある場合は、売買契約を有効に結べるかどうかが問題になります。
判断能力がしっかりしているうちであれば、本人が売主として売却を進めることや、将来に備えて任意後見契約を結んでおくことも考えられます。一方、判断能力が十分でない状態で家族が手続きを進めてしまうと、後から契約の有効性が争われるおそれがあります。迷う段階では、売却の準備を始める前に専門家へ相談しておくと安心です。
そのようなときに利用される仕組みが成年後見制度です。いずれも本人の意思と財産を守るための制度であり、家族の都合で家を処分するための手段ではない点を押さえておきましょう。この記事は、法務省・裁判所・国税庁・岡山市の公式ページを確認してまとめた一般情報です。
法定後見(後見・保佐・補助)と任意後見の違い
法務省の案内によると、法定後見は本人の判断能力の程度によって3つに分かれます。後見は判断能力が欠けているのが通常の状態の方が対象で、成年後見人が本人を代理して法律行為を行います。保佐は判断能力が著しく不十分な方が対象で、借金や不動産の売買などの特定の行為には保佐人の同意が必要です。補助は判断能力が不十分な方が対象で、特定の法律行為について補助人に同意権や代理権を与えることができます。
これに対して任意後見は、本人の判断能力が十分なうちに、将来任意後見人になる人と任せる事務の内容を、公正証書による契約で決めておく制度です。契約は、本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が生じます。任意後見監督人は、任意後見人が適正に仕事をしているかを財産目録の提出などを通じて監督する立場で、法務省の案内では専門職などの第三者が選ばれることが多いとされています。
親がまだ元気なうちに、将来の実家の扱いを家族で話し合い、任意後見を検討しておくことも一つの備えです。
保佐や補助の場合は、本人自身が売主として契約し、保佐人や補助人が同意する形になることもあります。どの類型で、どんな同意権・代理権が与えられているかによって手続きが変わるため、審判の内容を確認したうえで進めることが大切です。
成年後見人は家庭裁判所が選び、本人のために財産を管理する
法務省の案内では、法定後見の申立ては本人や配偶者、親族のほか、検察官などができ、身寄りがない場合などには市町村長にも申立権が与えられています。成年後見人などは、本人に必要な保護の内容に応じて家庭裁判所が選びます。親族のほか、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門家や法人が選ばれる場合もあり、複数選ばれることもあります。申立てた人が特定の人を希望していても、希望どおりに選ばれるとは限らないと明記されています。
成年後見人などの役割は、本人の不動産や預貯金などの財産管理と、介護契約の締結や医療費の支払いなどの身上保護です。後見人は本人の利益のために財産を管理する立場にあるため、実家の売却も、本人にとって必要かどうか、価格が適正かどうかという観点で判断されます。
たとえば「子が相続する前に現金にしておきたい」「兄弟で分けやすくしたい」といった家族側の事情だけでは、売却の理由として通りにくいと考えておくべきです。施設の費用を賄う、空き家の維持費や管理上の危険を避けるなど、本人にとっての必要性を説明できるかが出発点になります。
後見人が選ばれた後は、家庭裁判所への報告も後見人の仕事になります。岡山家庭裁判所は、選任された後見人向けに職務と報告の手引を公開しているため、売却を考える前に一度目を通し、売却代金を含む本人の財産をどう管理し報告するのかを確認しておくと、その後の手続きの見通しが立てやすくなります。
住まいだった家を売るには居住用不動産処分の許可が必要
裁判所の案内によると、成年後見人・保佐人・補助人が本人に代わって本人の居住用不動産を処分するには家庭裁判所の許可が必要で、許可を得ずに行った処分は無効になります。処分には、売却のほか、抵当権の設定、賃貸借契約の締結・解除、建物の取り壊しなども含まれます。申立てができるのは成年後見人などで、保佐人・補助人の場合は不動産を処分する代理権が与えられているときに限られます。申立先は後見等開始の審判をした家庭裁判所です。
「居住用不動産」の範囲は、思っているより広いことに注意が必要です。名古屋家庭裁判所の案内では、現在住んでいるものだけでなく、過去に住んでいたもの、住む予定のあるものも含むとされ、一度も住んだことがなく住む予定もないものは含まれないと説明されています。大阪家庭裁判所の案内でも、病院や施設などを出たときに住まいとなる不動産は含まれるとされています。
つまり、親が施設に入所して空き家になった実家も、原則としてこの許可の対象になると考えて準備するのが安全です。親が貸していたアパートなど、住んだことのない不動産の扱いは、後見人を通じて家庭裁判所に確認してください。
申立てのタイミングと必要書類
裁判所の案内では、申立てに必要なものとして、申立書、処分の必要性を示す資料、対象不動産の登記事項証明書などが挙げられ、申立手数料は収入印紙800円分、郵便料は裁判所ごとに異なるとされています。大阪家庭裁判所の案内では、売却の場合の添付書類として、全部事項証明書、固定資産評価証明書、不動産売買契約書の案のコピー、不動産業者が作成した査定書が示されています。査定書は鑑定書に準じた詳しい内容のものを求め、査定価格より低い価格で売る場合は、低額になった理由の説明書も必要としています。成年後見監督人などがいる場合は、その意見書も挙げられています。
タイミングについても具体的な案内があります。処分が必要な事情を家庭裁判所に前もって連絡したうえで事実上の交渉を始め、取引が成立する一歩前の段階で申立てをすること、審理には期間を要するため本取引日は余裕を持って設定することが求められています。
売却の実務に置き換えると、①買主候補と価格・条件の大枠を固める、②契約書の案を作って申立てに添付する、③許可が出てから契約・引渡しを確定させる、という順序になります。各裁判所で必要書類が少しずつ異なるため、岡山家庭裁判所の案内も必ず確認してください。
- 申立書
- 収入印紙800円分と郵便料(郵便料は裁判所ごとに異なる)
- 処分する不動産の全部事項証明書(提出済みで変更がなければ不要な場合あり)
- 固定資産評価証明書
- 不動産売買契約書の案のコピー
- 不動産会社が作成した査定書
- 査定価格より低く売る場合はその理由の説明書
- 処分の必要性を説明する資料
- 監督人がいる場合はその意見書
価格の根拠を示す査定書をどう準備するか
家庭裁判所は、売却が本人にとって必要かどうかとあわせて、価格が適正かどうかを確認します。大阪家庭裁判所の案内が、査定書について鑑定書に準じた詳しい記載を求め、査定より低く売る場合に理由の説明書を求めているのはそのためです。後見人としては、「この価格で売ることが本人の利益にかなう」と説明できる材料をそろえることが大切です。
査定書の中で根拠として示したい点は、①土地の面積・形状と、前面道路の幅や接道の状況、②建物の築年数や傷み具合、雨漏りやシロアリ被害の有無、③都市計画上の制限や浸水などのハザード情報、④周辺の取引事例や公的な価格指標との比較、などです。国土交通省の不動産情報ライブラリでは、取引価格の情報や地価公示などを地図上で確認できるため、後見人自身が価格の目安を確かめる手がかりになります。
古い家で解体を前提に売る場合や、買取業者に売る場合など、査定より低い価格になりやすい事情があるときは、その理由を早めに整理しておくと説明書の作成がスムーズです。複数の売り方を比べた結果として今の条件を選んだ、という経緯を残しておくことも役立ちます。
具体例:施設に入った親の実家を売る場面
仮に、市内の戸建てに一人で住んでいた親が施設に入所して実家が空き家になり、長女が成年後見人に選ばれたとします。施設の費用を本人の預貯金だけで賄い続けるのが難しくなり、空き家の管理も負担になってきたため、実家の売却を検討する場面です。
この場合、長女は後見人として、まず本人の収支と財産の状況を整理し、売却が本人にとって必要な理由をまとめます。並行して不動産会社に調査と査定を依頼し、買主候補との間で価格や引渡し条件の大枠を詰めます。そのうえで契約書の案と査定書を添えて家庭裁判所に申立てを行い、許可の審判を受けてから正式な契約・決済へ進みます。申立書の記載例でも、施設費用を捻出する必要があること、買受希望価格が妥当であること、子らが賛成していることなどを事情として書く形が示されています。
税金の面では、国税庁のタックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)によると、住まなくなった家でも、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば、居住用財産の3,000万円特別控除の対象になり得るとされています。仮に令和8年中に施設へ移ったのであれば、期限は令和11年12月31日です。ただし親子や夫婦など特別の関係がある人への売却は対象外で、ほかにも要件があります。ここで示したのは一般情報であり、適用の可否は税理士や税務署に確認してください。
売却までの手順チェック(何を・いつ・どこで)
全体の流れを、ご家族の目線で並べると次のとおりです。①親の判断能力に不安を感じたら:かかりつけ医や地域包括支援センターに状況を相談し、任意後見で足りるのか法定後見が必要かを、弁護士・司法書士などに確認する。②後見等の開始が必要な場合:家庭裁判所に申立てをする。必要書類や主治医の診断書・鑑定連絡票の扱いは、申立先の家庭裁判所の案内に従う。③後見人が選ばれたら:本人の財産目録や収支を整理し、実家の売却が本人に必要かを検討する。④売却の準備:不動産会社に物件調査と査定書の作成を依頼し、登記事項証明書・固定資産評価証明書をそろえる。⑤家庭裁判所へ事前連絡:売却の必要がある事情を伝え、交渉を始める。⑥申立て:契約書の案・査定書などを添えて居住用不動産処分許可を申し立てる。⑦許可後:売買契約・決済・引渡しへ進む。
住宅ローンを使う買主の場合は、金融機関の審査や融資実行の日程とも合わせて考える必要があります。家具や遺品の片付け、名義や住所の変更の有無なども、許可が出るまでの期間に並行して進めておくと、引渡しを急がずに済みます。
- 01相談
地域包括支援センターや専門家に、任意後見か法定後見かを確認
- 02後見等開始の申立て
家庭裁判所が後見人などを選任
- 03財産と必要性の整理
本人の収支・財産目録をもとに売却の必要性を検討
- 04査定と交渉
家庭裁判所へ事情を連絡し、査定書を用意して買主と条件を詰める
- 05許可の申立て
契約書の案・査定書を添えて居住用不動産処分許可を申し立てる
- 06契約・引渡し
許可の審判後に売買契約・決済・引渡し
岡山での確認先
後見等の申立てや居住用不動産処分許可の窓口は、後見等開始の審判をした家庭裁判所です。岡山家庭裁判所のウェブサイトでは、成年後見制度の案内として、裁判所の後見ポータルサイトの紹介や、選任された後見人向けの「成年後見人等の職務と報告の手引」などの資料が掲載されています。申立書の書式や添付書類は、まず同裁判所の案内を確認してください。
岡山市の公式サイトによると、市には令和2年に開設された岡山市成年後見センターがあり、北区鹿田町の岡山市保健福祉会館9階で、制度についての相談や、弁護士・司法書士・社会福祉士による無料の専門職相談(予約制)を行っています。運営は岡山市社会福祉協議会への委託とされています。市のよくある質問では、地域包括支援センターや社会福祉協議会も相談先として案内されており、担当課は保健福祉局の福祉援護課です。また、市の定例無料相談では、司法書士が成年後見に関する相談にも応じています。
倉敷市・瀬戸内市やその他の市町にお住まいの場合は、各市町や岡山県の公式サイトで、地域包括支援センターや成年後見の相談窓口を確認してください。相談に行くときは、親の名前と生年月日、実家の所在地、施設の入所状況、通帳や固定資産税の納税通知書などの財産の資料、かかりつけ医の情報をメモにまとめて持参すると、話が早く進みます。
トリプルギブへのご相談
株式会社トリプルギブは、岡山市南区福吉町を拠点に、岡山市・倉敷市・瀬戸内市を中心とした不動産の売却相談に対応しています。成年後見人の方やご家族からのご相談では、家庭裁判所への申立てに添付する査定書や売買契約書の案の準備、許可の見込みに合わせた契約・引渡し日程の組み立てなど、売却側の実務を一緒に整理します。
ご相談後は、物件の調査をもとに根拠のある査定を提出し、売却方針を明確にしたうえで仲介か買取かを確定します。成年後見の申立てや法的な判断は弁護士・司法書士、税金は税理士の領域となるため、必要に応じて専門家への相談をおすすめします。対応できるかどうかは物件ごとに判断しますので、まずは状況をお聞かせください。
よくある質問
Q. 後見人が選ばれる前に、買主を探し始めてもよいですか?
後見人が選ばれるまでは、本人に代わって契約を結べる人がいません。この段階で価格を約束したり手付金を受け取ったりすると、後で契約の有効性が問題になりかねません。できるのは、物件の状態の確認や必要書類の整理、査定の相談といった準備までと考えておくのが安全です。買主との交渉は、後見人が選ばれ、家庭裁判所へ事情を連絡してから始めるのが案内に沿った進め方です。
Q. 子どもが親の実家を買い取ることはできますか?
家族が買主になる場合も、後見人は本人の利益のために判断する立場にあるため、価格が適正か、本人にとって必要な売却かが問われます。特に後見人自身が買主になる場合は、立場が重なるため手続き上の注意が必要です。税金の面でも、親子間の売却は居住用財産の3,000万円特別控除の対象外とされています。家族間で売買する場合は、事前に家庭裁判所や司法書士・税理士に確認してください。
Q. 許可が出なかった場合、すでに結んだ契約はどうなりますか?
裁判所の案内では、許可を得ずに行った居住用不動産の処分は無効とされています。そのため、許可前に契約を確定させる進め方は避け、申立ては取引が成立する一歩前の段階で行うよう案内されています。契約書の案を申立てに添付し、許可の審判を受けてから正式に契約する流れにしておけば、許可が出なかった場合でも買主との間で大きな問題になりにくくなります。
Q. 任意後見契約があれば、家庭裁判所の許可は不要ですか?
任意後見契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任してから効力が生じます。親の判断能力が低下した後に契約があっても、まず監督人選任の申立てが必要です。また居住用不動産処分許可の手続きは、法定後見の成年後見人・保佐人・補助人を対象とする案内です。任意後見人が実家を売る場合の進め方は、契約の内容によって異なるため、契約を作った公証役場や専門家に確認してください。
この記事は一般情報です。法律・税金・相続・登記・住宅ローン等の個別案件は、税理士、司法書士、弁護士、金融機関などへ確認してください。
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